江古田駅
スーパーのバイトが終わった。人通りの少ない夜道を歩く。寒い冬だった。
スニーカーの靴ひもを結ぶのがめんどくさかった。何もかもめんどくさかった。
家までは徒歩五分。この距離も億劫だった。
夜道を歩くとおじさんに抜かされた。抜かされる時、話しかけられた。
「どうしてそんな効率の悪い歩き方してるの?」
靴ひものことだとわかった。
「どうしてそんな効率の悪い歩き方しているの?すごく、すごく、無駄。」
なんで靴ひもくらいでこんなこと言われなきゃ言われないんだろうと思った。かがんで靴ひもを結んだ。
めんどくさくて靴ひもを結ばなかった。何もかもめんどくさかった。
そのおじさんに言われたことが、私の人生を指摘されているようだった。
「すごく、すごく無駄」
生きることをめんどくさがって、無駄な時間を過ごした。まだ生きていた頃の惰性で生きていた。